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86 電子申告のメリット・デメリット

確定申告がいよいよ始まり、国税電子申告・納税システムであるe−Taxの宣伝がさかんに行われているので、e−Taxの名前を聞いたことがある方も多いと思います。国税庁の発表では平成15年の国税電子申告制度開始から平成19年1月4日までに累計で約80万件の電子申告利用があったとのことです。

それでは、電子申告・納税を利用できる手続やメリット・デメリットにはどのようなものがあるでしようか。

1.国税電子申告・納税(e−Tax)

(1) 利用できる手続
e−Taxは現在、所得税、法人税、消費税、酒税、印紙税に係る申告(一部除く)、すべての税目に係る納税、青色申告の承認申請や納税地の異動届などの申請・届出等で利用できます。
(2) 利用できる方
上記の申告、納税、申請等の税務関係手続を行う納税者と税理士や税理士法人等の税理士業務を行う者が利用できます。
(3) 利用開始のための流れ
e−Taxを利用するためには、(1) 納税地を所轄する税務署長へ開始届出書を提出、(2) 電子証明書の取得、(3) 利用者識別番号の受領、(4) e−Taxソフトのインストール等の初期登録作業等を行う必要があります。特にA電子証明書の取得については、平成19年度税制改正によって、平成19年1月4日以降は顧問税理士による代理送信の場合は、納税者が電子証明書を取得しなくてもよくなりましたので、顧問の先生に一度ご相談されたらどうでしょうか。
(4) 利用可能時間
通常は月曜日〜金曜日の午前9時から午後9時まで(祝日等を除く)ですが、確定申告期間である2月16日〜3月15日は24時間いつでも利用することができます。

2.地方税電子申告・納税(eLTAX)

(1) 利用できる手続
eLTAXは現在、法人都道府県民税、法人事業税、法人市町村民税、固定資産税(償却資産税)に係る申告で利用できます。
(2) 利用できる地方公共団体
平成19年1月時点で東京都や大阪府等の47都道府県、16市で利用することができます。将来的には全国規模で利用できる見込です。
(3) 利用できる方
上記の申告に係る納税者と税理士や税理士法人等の税理士業務を行う者が利用できます。
(4) 利用開始の流れ
eLTAXでは、(1) 電子証明書の取得、(2) 利用届出、(3) 利用者ID受領等の初期登録作業を行う必要があります。電子証明書の取得は平成19年4月2日以降、国税電子申告と同様に納税者については省略可能になる予定です。
(5) 利用可能時間
月曜日〜金曜日の午前8時30分から午後8時まで(祝日等を除く)です。

3.メリット・デメリット

電子申告・納税システム利用にあたって現在の主なメリットデメリットは以下の通りです。

(メリット)
国税・地方税共通
申告書等を電子ファイルで作成、保存することによりペーパレス化を図ることができる
受付システムの稼動時間内であれば、税務署等の窓口に出向かなくても自宅やオフィスで申告手続等を行うことができる
国税
インターネットバンキング等を利用することにより、金融機関等の窓口へ出向かなくても自宅やオフィスで納税手続を行うことができる
還付金の還付が還付申告より約3週間後に短縮することができる(通常は約6週間後)
地方税
複数の都道府県、市区町村にそれぞれの申告を1回のデータ送信操作で行える

(デメリット)
国税・地方税共通
原則としてパソコン及びインターネットを利用できる環境が必要である
電子証明書を取得する必要があり、電子証明書の取扱等セキュリティ体制を検討する必要がある(納税者は取得する必要がない場合あり)
利用開始のための設定等ある程度のパソコン等IT知識が必要となる
電子申告と同時に別途紙で提出する必要書類がある場合がある(平成19年度税制改正で一部書類は添付が不要となる見込)
申告書に税務署等の収受印が押されないため、第三者に申告書をいつ提出したか証明するのに手間取る
地方税
現在は利用できる市区町村が限定されている(将来的には全国規模で利用可能の見込み)