今年は、台風や地震などの自然災害が猛威をふるった1年でした。被災者の皆様には謹んでお見舞い申し上げます。災害等によって被害を被った場合、税制では次の特例(主なもの)が認められています。
1.期限の延長
先ずは、申告と納付に関する期限の延長特例です。
法人の法人税確定申告は決算期末から2ヵ月以内(特例承認を受けているときは3ヵ月)に行うこととされ、個人の所得税確定申告は2月16日から3月15日までの間に行うこととされています。また、申告と同時に税金を納付しなければなりません。
しかし、災害等を受けた場合には、この申告及び納付の期限延長が認められます。災害等その他やむを得ない理由により、申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までに、書類の提出又は納付ができないときは、その理由がやんだ日から2月以内に限り、これらの期限を延長することができます。
この期限延長には、国税庁長官が、都道府県の全部又は一部の地域と期日を指定して行う“地域指定”と、国税庁長官又は国税局長若しくは税務署長が納税者からの申請を受けて期日を指定する“個別指定”があります。
個別指定の申請は、災害等がやんだ日から2月以内に書面で行うこととされています。ここでいう、災害その他やむを得ない理由とは、
a: |
地震、暴風、落雷、豪雪、津波、地すべりその他自然現象の異変による災害ケース |
b: |
火災、火薬類の爆発、ガス爆発、交通と絶その他人為による異常な災害ケース |
c: |
申告者の重傷病その他の自己の責めに帰さないやむを得ないケース |
があります。
平成16年11月11日現在、地震の被害を受けた新潟県の一部地域と台風23号の被害を受けた兵庫県の一部地域が地域指定されています。
2.納税猶予
次は、納税の猶予に関する特例です。
災害等により財産に相当な損失を受けた場合、損失を受けた日以後1年以内に納付すべき一定の国税については、法定納期限から1年以内の期限に限り納税の猶予が認められます。この場合の申請は、災害等がやんだ日から2月以内に書面で行うこととされています(国通法46)。
3.個人の災害特例
個人の被災者に対しては、その所得税について2つの方式によって税の軽減または免除が図られています。
・所得税法の雑損控除
・災害減免法
軽減または減免の対象となる災害等は、次のとおりです。
A: |
盗難、横領(詐欺、脅迫による損失は該当しません)。 |
B: |
災害、風水害、火災、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害及び鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫、害獣その他の生物による異常な災害。 |
2つの方式はいずれかの選択になります。それぞれの要件や軽減額等は次のとおりですが、選択に当たっては両方式の比較が必要です。
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所得税法(雑損控除)
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災害減免法
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損失の
発生原因
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災害、盗難、横領による損失が対象となります。 |
災害による損失に限られます。 |
対象となる
資産の範囲等
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生活に通常必要な資産に限られます。
(たな卸資産や事業用の固定資産、山林、生活に通常必要でない資産は除かれます。) |
住宅や家財。ただし、損害額が住宅や家財の価額の2分の1以上であることが必要です。雑損控除との選択適用になります。 |
控除額の計算又は所得税の軽減額
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控除額は次の(イ)と(ロ)のいずれか多い方の金額です。
(イ) |
差引損失額−所得金額の10分の1 |
(ロ) |
差引損失額のうち災害関連支出の金額−5万円
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(注) |
1. |
差引損失額=損害金額−保険金などによって補填される金額 |
2. |
災害関連支出=災害により減失した住宅、家財を除去するための費用や豪雪による家屋の倒壊を防止するための雪下ろし費用など |
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その年の所得金額
所得税の軽減額
500万円以下 |
全額免除 |
500万円超
750万円以下 |
2分の1の軽減 |
750万円超
1,000万円以下 |
4分の1の軽減 |
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参考事項
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・ |
災害等に関連してやむを得ない支出をした金額についての領収書を確定申告書に添付するか、確定申告書を提出する際に提示することが必要です。 |
・ |
損失額が大きくて、その年の所得金額から控除しきれない金額は、翌年以後3年間に繰り越して各年の所得金額から控除できます。 |
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・ |
原則として損害を受けた年分の所得金額が 1,000 万円以下の人に限ります。 |
・ |
「損失額の明細書」を確定申告に添付することが必要です。 |
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4.法人の災害特例
法人の被災者に対しては、災害損失金の繰越特例が認められています。
法人で青色申告の場合には、欠損金を7年間(平成13年4月1日以後開始年度について適用し、それ以前分は5年間)繰り越すことが認められますが、白色申告の場合でも災害等による損失金は、一定の要件のもとで繰越が認められます。
要件1: |
対象となる災害損失の額は、災害の発生した年度又は災害のやんだ年度において損金経理すること |
要件2: |
災害により損失が生じた年度において、損失の額の計算に関する明細(申告書別表7)を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出すること |
対象となる災害損失は、棚卸資産、固定資産及び繰延資産のうち他者の有する固定資産を利用するために支出されたものに限定されています。
なお、災害損失は、保険金、損害賠償金等によって補てんされた金額を除き、災害による資産価値の減少額、災害のやんだ日から1年以内に要した原状回復費、障害物の除去費等を含みます。
対象となる災害等は、震災、風水害、火災、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害、鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫、害獣その他生物による異常災害とされています。
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