所得税では「合計所得金額」という言葉がよく登場します。その金額によって、扶養控除など各種所得控除が適用できるかが決まってくるからです。住宅ローン控除特例でも合計所得金額が 3,000 万円以下であることを適用要件としています。
さて、合計所得金額とは、次の 1 と 2 の合計額に、退職所得金額、山林所得金額を合わせた金額とされています。
- 事業所得・不動産所得・利子所得・配当所得、給与所得、総合課税の短期譲渡所得及び雑所得の合計額(損益通算後)
- 総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額(損益通算後)の2分の1の金額
合計所得金額は、実際に所得税の課税対象となる所得金額(総所得金額等)とは異なり、所得控除の有無や特例適用の際の判定基準となるため、純損失や雑損失の繰越控除、特定居住用財産の買換え等で生じた譲渡損失の繰越控除を適用する前の金額とされています。また、土地や株式など申告分離課税の所得金額がある場合も、それらの特別控除を適用する前の所得金額を加算して算出することになっています。
この「合計所得金額」については注意したい点がいくつかあります。例えば、株式の譲渡損益との関係です。
平成 14 年末で廃止された特例ですが、「長期所有上場株式等の 100 万円控除」という制度がありました。株式譲渡益 100 万円までを非課税とする特例でしたが、この特例を使っている場合、合計所得金額に含まれることになる「株式等の譲渡所得金額」は、100 万円を控除した“後”の金額で判定することとされていました。申告分離課税の所得金額は、上記のように特別控除を適用する前の所得金額で判定するとされていますが、こうした特例の場合は、その趣旨から、納税者に有利であるように規定されていたわけです(100 万円控除の制度は 13 年 11 月の税制改正で 17 年末まで延長するとされましたが、15 年度改正で前倒し廃止することになりました)。
一方、平成 15 年から導入される「上場株式等の譲渡損失の繰越控除の特例」では、所得税で扶養控除の対象となる扶養親族に該当するかどうかなどを判定する際の「合計所得金額」は、この繰越控除の適用“前”の金額となることとされています。こちらはその年分の所得状況を見るという点が重視され、繰越控除をする前で判定することになるわけです。課税対象の総所得金額に入ってくる「株式等の譲渡所得金額」の方は、繰越控除を適用した“後”の金額とされます。
なお、源泉徴収のある特定口座で、確定申告不要を選択している場合の所得金額は、合計所得金額に含まないことになっています。合計所得金額の判定では、株式だけでなく、土地や建物などの譲渡がある場合にも気をつける必要があります。
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