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37 相続税・贈与税がかわる!

平成15年の税制改革では、相続税・贈与税の税率の引き下げと、相続・贈与税の一体化措置といわれる「相続時精算課税制度」の創設が行われることになりました。この制度を選択すると、生前贈与の非課税枠が 2,500万円、それを越える部分の贈与税率が 20% と低く抑えられます。

さらに、この制度では、平成15年から17年までの3年間は、住宅取得資金贈与(金銭)であれば非課税枠が1,000 万円上乗せされる特例もできることになりました。生前贈与をした場合の贈与税が大幅に軽減されることになります。

では、生前贈与をする場合、従来からの贈与税の非課税枠(基礎控除 110万円)と、相続時精算課税制度を選択した場合の非課税枠2,500万円とのどちらかを利用する方がいいのでしょうか。贈与税と、最終的に納めることになる相続性の金額から見ると、所有する財産、贈与しようとする財産の多寡や種類、そして、財産の評価方法などによって様々ですから、どちらが良いという問題ではないようです。

それに、元々この制度は、相続税の計算の時に、生前贈与された財産と相続財産とを合わせて計算した相続税額から、生前贈与時の贈与税額を控除するという仕組みとなっていて、基礎控除を先取りするだけという見方もできますので、相続税・贈与税額の面から見れば、制度を選択したから有利ということにはならないでしょう。ただ、基礎控除(5,000万円+1,000万円×法定相続人数)によって相続税がかからない場合は、やはり、この制度を選択することで財産の移転を早い時期に非課税で行えることがポイントになってきます。

逆に、現金などの資産が多額にある場合なら、従来からの贈与税の基礎控除の110万円を活用した方が、確実に将来の相続時の現金を減らすことができるかもしれません。相続時精算課税制度は2,500万円までの贈与が非課税となりますが、制度を選択したら、相続の時まで適用され途中で取りやめることはできません。

相続時精算課税制度の最大のメリットは、株式や不動産を贈与した場合、贈与した時点の評価額が、将来の相続時の評価額となることかもしれません。例えば、評価の低い時に株式を贈与しておけば、将来株価が上昇した場合でも、相続時に相続財産と合算する株式の評価額は贈与した時の時価とされることから、相続税の対象となる財産を小さくする効果があるわけです(当然、現在の時価が高ければ逆の結果になります)。株式や不動産などについては、相続財産の評価額を現在の時価で確定できる、ということになります。

現在、改正法案が通常国会で審議されていますので、制度の詳細は、改正法が成立、公布される3月末以降、明らかとなってきます。

相続時精算課税制度イメージ