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35 相続税・贈与税の一体化措置 〜導入が検討される相続時精算課税制度〜

11月に政府税制調査会が「平成15年度における税制改革についての 答申」を小泉首相に提出しました。例年ですと、自民党の税制改正大網とほぼ同時期の 12月中旬にまとめられていたものですから今年は異例かもしれません。 減税を打ち出してはいますが、その後の増税により一定期間での税収は中立に すべきとの立場です。

ただ、これはあくまでも、あるべき税制改革に ついての「首相への答申」ですから、実際にどのような税制改正が実施されることになるかは、 12月13日(予定)にまとめられる自民党税制調査会の「平成15年税制改正大網」で 決定されることになります。

さて、答申の中で注目される物の一つに、相続税・贈与税の 改正があげられます。税調では、「高齢者の保有する資産の次世代への移転の 円滑化に資する観点から、相続税・贈与税の一体化措置を導入する。これにあわせて、 相続税についても最高税率の引下げを含む税率構造の見直し及び課税ベースの拡大を 図るとともに、贈与税について相続税に準じた見直しを図る」ことを基本方針と しています。

高齢化の進展で相続によって資産が移転するのが遅れてきていること、 また、高齢者の金融資産や不動産等の資産を若年層が有効に活用することが経済の活性化に つながるとの観点から、「生前贈与」をしやすい環境をつくる必要があるとして、 まず、「相続税・贈与税の一体化措置」を平成15年度税制改正で導入すべきとしています。

この一体化措置は、「相続時精算課税制度(仮称)」として創設される ことになりそうです。65歳以上の親が20歳以上の子に生前贈与する場合に適用されるもので、 贈与税を支払わずに贈与が受けられる財産の額(非課税措置・現行は年110万円)を新たに 設定して贈与税を算定・納税し、相続があったときに生前贈与財産を相続財産に取り込んで 精算することになります。

相続の時に生前贈与された財産と相続財産とを合わせて計算した 相続税額から、すでに支払った贈与税を控除して相続税を納税するという仕組みです。 非課税措置として、贈与時に財産価額から控除される金額はこれから検討されることに なります。現在の贈与税の非課税枠は年110万円ですが、この一体化措置での非課税限度額は 何年かにわたって使えるような仕組みとするため、相続税の 基礎控除額 (5,000万円+法定相続人×1,000万円)の水準を考慮して決定されることに なるといわれています。

なお、政府税調の答申では、相続税の基礎控除の引下げ、 最高税率(70%)の引下げ、税率の刻み数も見直す必要があるとしていますが、 一体化措置の対象にならない贈与税については、生前贈与による相続税の回避防止という 役割は変わらないことから、相続税より累進度の強い現行の累進構造を残すことが 望ましいとしています。

一体化措置答申の
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