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30 税制改正の行方

首相の諮問機関である政府税制調査会は、さる6月14日「あるべき税制の構築に向けた 基本方針」と題する税制改革に関する答申をとりまとめ、その答申書を首相に手渡しました。 一方で、やはり首相を議長とする経済財政諮問会議が、経済活性化のための減税措置を 盛り込んだ構造改革案をまとめ、6月25日に閣議決定しています。

また、与党3党でも、6月17日、党首による合意文書としてまとめた当面の経済活性化策、 いわゆるデフレ対策で税制改革を重要項目としています。あちこちで税制についての議論が 行われているので、どのように税制が決まっていくのかわかりにくい感はいなめません。

税制改正は毎年行われています。大きな改正の年もあれば、小さな改正もあります。 例年、12月の中頃に与党自民党が「○年度税制改正大綱」とする基本方針を決定し、 それを基に税制改正法案が作られ、内閣が国会に提出するというのが通常のパターンです。

そして、年度末の3月末までに改正法案が成立、公布されて、4月1日から改正された税制が 実施されるわけです。年度改正の大部分は租税特別措置法の改正で、各種の特例の適用期限が 3月31日までとなっているため、その期限の延長や特例の内容、適用されるための要件の見直し などが行われているのです。 税制改革イメージ

ところが、平成14年度改正は変則的に行われました。法人の交際費課税の緩和措置や個人の 上場株式譲渡について特定口座内の取引を申告不要とする制度を新たに設けるなどといった 多数の項目が14年度の税制改正で措置され、成立していますが、今年は国会の会期が延長された 現在も、法人税に連結納税制度を導入するための改正案の審議が続いています。

これは、法案の準備に時間がかかったためですが、連結納税制度関連の改正法案は 6月末には成立し、この8月から施行されることになります。

これで平成14年度の税制改正は一段落ということになりますが、今後の焦点は、前述の 経済財政諮問会議、与党3党、政府税制調査会がまとめた税制改革の方針がどのように 実現されていくかです。所得税や相続税など個人に関わる税制についても、大幅な見直しが 行われていく可能性があるため注目したいところです。

与党のデフレ対策では、資産の世代間の移転を進めるため、相続税・贈与税の見直しを 行うことと明記していますが、諮問会議では基本的な方針と検討する項目を示しているだけで、 具体的にどうなるか、現段階では挙げられていません。

ただ、「広く薄く簡素に(諮問会議)」「広く公平に負担を分かち合う(政府税調)」と あるように、所得税については負担のあり方が検討されることは確実で、各種の所得控除が 見直されるなど増税色の濃いものとなる可能性もあります。

政府税調は中長期的な視点からの改革方針を示していますが、与党や政諮問会議では、 景気対策としての税制改革を早急に実施する必要があるとしています。 年末の税制改正大綱に向けて、引き続き税制改革の議論が行われていくことになります。