平成29年度税制改正において、相続税の物納制度の見直しが行われました。
1. 物納制度の概要
国税は、金銭で納付することが原則ですが、相続税に限っては、納付すべき相続税額を納期まで又は納付すべき日に延納によって金銭で納付することが困難な理由がある場合には、申請により、その納付を困難とする金額を限度として、一定の相続財産で納付すること(物納)が認められています。
物納の要件 |
(1)延納によっても金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること |
(2)物納申請財産が定められた種類の財産で申請順位によっていること |
(3)「物納申請書」及び「物納手続き関係書類」を期限までに提出すること |
(4)物納申請財産が物納に充てることができる財産であること |
2. 物納に充てることのできる財産の種類とその順位(改正後)
順位 |
物納に充てることのできる財産の種類 |
第1順位 |
(1)不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等の(※1)
※1 特別の法律により法人の発行する債権及び出資証券を含み、短期社債等を除く。 |
(2)不動産及び上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの |
第2順位 |
(3)非上場株式等(※2)
※2 特別の法律により法人の発行する債権及び出資証券を含み、短期社債等を除く。 |
(4)非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの |
第3順位 |
(5)動産 |
- (注1)
- 相続開始前から被相続人が所有していた特定登録美術品は、上の表の順位によることなく物納に充てることのできる財産とすることができます。特定登録美術品とは、「美術品の美術館における公開の促進に関する法律」に定める登録美術品のうち、その相続開始時において、すでに同法による登録を受けているものをいいます。
- (注2)
- 「物納劣後財産」とは、他に物納に充てるべき適当な財産がない場合に限り物納することができる財産のことをいいます。例えば、法令の規定に違反して建築された建物およびその敷地、劇場、工場、浴場その他の維持管理に特殊技能を要する建物及びこれらの敷地などが該当し、他の財産より物納の順位が後れるものをいいます。
3. 第1順位の「上場株式等」とは
物納財産の順位が第1順位である「上場株式等」とは具体的に次のものを指します。
具体例 |
上場されて
いる |
社債、転換社債型新株予約権付社債、特殊法人債、特定社債券、株式、優先株式、新株予約権証券、ETF、REIT、JDR、ETN、特定目的信託の受益証券等 |
上場されて
いない |
オープンエンド型の証券投資信託の受益証券
オープンエンド型の投資法人が発行する投資証券 |
4. 改正内容
これまで物納順位が第2順位であった社債及び株式等の有価証券のうち、金融商品取引所に上場されているもの等が第1順位となりました。また、これまで物納できなかった有価証券でも、金融商品取引所に上場されているものは第1順位で物納できるようになりました。
5. 適用時期
平成29年4月1日以後に物納の許可を申請する場合に適用されます。
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