前の解説へ 次の解説へ

96 新しいリース取引会計基準の適用開始せまる

1.新しい会計基準

平成19年3月に企業会計基準委員会から「リース取引に関する会計基準」と「リース取引に関する会計基準の適用指針」が発表され、平成5年6月に発表された「リース取引に係る会計基準」以来約14年ぶりにリース取引に関する会計基準が改正整備されました。改正後リース取引会計基準は、約3ケ月後の平成20年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるため(早期適用も可)、リース取引を行っている場合は決算書にどのような影響があるかよく理解しておく必要があります。リース取引はリース期間の中途においてその契約を解除することができない等のファイナンス・リース取引とそれ以外のオペレーティング・リース取引に区分され、さらにファイナンス・リース取引はリース契約の緒条件に照らしてリース物件の所有権が借手に移転すると認められる所有権移転ファイナンス・リース取引とそれ以外の所有権移転外ファイナンス・リース取引に区分されます。改正後リース取引会計基準でも、この点に変更はありませんが、所有権移転外ファイナンス・リースについて認められていた賃貸借処理が廃止され、通常の売買取引に準じた会計処理に統一されました。

これまで多くの企業で所有権移転外ファイナンス・リースについては賃貸借処理が採用されており、リース料支払時に費用計上されていました。しかし、今後は原則としてリース資産とリース債務を賃借対照表に計上し、リース資産についてはリース期間にわたり減価償却を行い、支払リース料をリース債務の返済と利息相当額に区分し会計処理することになります。
例外的な取扱いとして、重要性の乏しいリースとしてリース契約1件当たりのリース料総額が300万以下のリース取引やリース期間が1年以内の短期のリース取引等については、通常の賃貸借処理による簡便的な取扱いが認められています。

2.即存リース契約の取扱い

それでは、改正後リース取引会計基準の適用初年度開始前にすでに存在するリース契約については、どのような取扱いになるでしょうか。
・原則的取扱い 通常の売買取引に準じた会計処理に変更する
改正後リース取引会計基準により会計処理を行います。この場合、過去の賃貸借処理とリース取引開始日から適用初年度の期首まで改正後リース取引会計基準によった場合の会計処理との差額を過年度損益の修正として特別損益に計上します。
・例外的取扱い(1)適用初年度開始時に取得したものとする
適用初年度開始時に前年度末における未経過リース料残高又は利息相当額控除後の未経過リース料期末残高相当額のどちらかを取得価額として取得したものとし、リース資産に計上することができます。また、利息相当額控除後の未経過リース料期末残高相当額を取得価額とした場合は、利息の配分につき利息法のほか利息相当額の総額をリース期間中の各期に定額で配分することもできます。
・例外的取扱い(2)賃貸借処理を継続する
適用初年度開始後も従来の賃貸借処理を継続して適用することができます。その場合には、賃貸借処理を適用している旨と改正前会計基準で必要とされていた事項を注記する必要があります。
参考文献
 「リース取引に関する会計基準」
 「リース取引に関する会計基準の適用指針」