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82 株主資本等変動計算書への対応

会社法が施行され、会社法施行日後に事業年度終了日を迎える事業年度から、利益処分案が廃止され、新たに株主資本等変動計算書を作成する必要が全ての株式会社に義務付けられています。

計算書類も純資産の部が変更されるなど、会社法への対応に注目が集まっているなか、株主資本等変動計算書についても押さえておきたいところとなります。

従来の利益処分案との違いは?

従来の利益処分案は、対象となった事業年度における未処分利益をその後どう処分するかといった将来の処分内容を記載する書類であったのに対し、株主資本等変動計算書は、事業年度中の純資産の部の変動内容を表す書類となっています。それぞれの書類が着目する期間といった点においては、両者は全く相違していることになります。

株主資本等変動計算書の記載方法

株主資本等変動計算書は、貸借対照表の純資産の部について、一会計期間における変動額のうち、主として、株主に帰属する部分である株主資本の各項目の変動事由を報告するために成作するものです。主として株主資本の部分の報告に主眼をおいているため、株主資本とそれ以外の項目で記載方法に若干の相違があります。

純資産の部のうち株主資本の項目については、新株の発行、剰余金の配当などの変動項目ごとに金額を記載することになりますが、株主資本以外の項目(例えば株式等評価差額金など)については、変動事由ごとではなく、その変動額を純額でまとめて記載することが原則となっています。つまり、株主資本以外の項目については、様々な変動事由が生じていたとしても、結果である変動額そのものを記載すれば足りることになります。この点が大きな違いですので覚えておきたいところです。

ただし、その変動額について、株主資本と同様に変動事由ごとに表示(注記を含む)することも可能です。

作成初年度の留意点

会社法施行後の適用初年度については、前事業年度で作成した旧商法における利益処分案への記載内容に留意する必要があります。

既に述べたように、株主資本等変動計算書は事業年度中の変動事由を報告するためのものですが、この事業年度中には、前期に作成した利益処分案による変動も時期的に含んでしまうからです。

つまり、前期の利益処分案で配当の支払いと利益準備金の積み立てを記載していたとすると、当期(会社法適用初年度)の株主資本等変動計算書にも配当支払による繰越利益剰余金の変動と、利益準備金の変動を記載することになります。

既に前期で利益処分案に記載しているからと、うっかり記載漏れが無いように十分留意したいものです。