1.はじめに
平成17年6月、商法の会社に関する規定、株式会社の監査に関する商法の特例に関する法律、有限会社法を整理、解釈の明確化・再編成をして、“会社法”が誕生しました。
この会社法の中で創設された新しい制度が”会計参与”です。
会計参与は、税理士、税理士法人、公認会計士、監査法人といった会計のプロが、株主総会によって選任された会社の役員としての立場で、取締役と共同で計算書類を作成し、かつ、取締役とは別に計算書類を保存・開示することにより、計算書類の正確性と信頼性を高め、かつ、取締役が経営に専念できる環境を創設することを目的とするものです。
2.導入の背景事情
我が国中小企業における資金調達は、伝統的に主として金融機関からの借入金によってまかなわれてきましたが、不動産担保偏重、及び代表者等による個人保証の問題がかねてから指摘されていました。今日において、不動産バブル崩壊後において不動産担保は万全とはいえなくなり、個人保証についても社会的問題を生みつつあります。このような時代変化の中で、金融機関が中小企業金融を引き続き円滑に担ってゆくためには、担保を不動産や個人保証以外にも求めていく必要があり、従来以上に計算書類の重要性に注目が集まるようになったものです。そして、計算書類の正確性、信頼性をどうやって高めていくか、といった点に関して議論が行われてきました。
その結論の一方が“中小企業の会計に関する指針”であり、もう一方が“会計参与”です。会計参与と中小企業の会計に関する指針は、車の両輪のようなもの。あるいは、ハードウェアとソフトウェアの関係にあります。
会計に精通した会計参与が、寄るべき会計指針に基づいて、正確な計算書類を作成することに、大きな期待が高まっているところです。
3.会計参与とは
会計参与について、簡単に説明すると、以下のとおりです。
資格は?
|
税理士、税理士法人又は公認会計士、監査法人を資格が必要です。 |
強制
又は
任意?
|
会社の規模や機関設計のいかんにかかわらず、設置義務のない任意の機関です。
但し、取締役会を設置した場合には、監査役・三委員会等・会計参与のいずれかを設置しなければならないので、会計参与を設置するケースが考えられます。 |
立場は? |
会社の役員(社外取締役)となります。 |
兼務は? |
取締役、監査役、使用人は会計参与を兼務することができません。
顧問税理士は、上記の使用人等に該当しない限り兼務する事が可能です。 |
職務は?
|
主な職務は、以下のとおりです。
|
1. 取締役と共同して計算書類を作成 |
|
2. 計算書類を保存 |
|
3. 株主総会での説明 |
|
4. 閲覧対応 |
|
責任は?
|
会社に対する責任と第三者責任を負います。 |
4.会計参与のメリットは
会計参与は、税理士、税理士法人、公認会計士、監査法人の資格を必ず必要とします。このような職業会計専門家によって作成される計算書類は当然、正確性が高く、かつ、透明性も高いものといえます。
したがって、会計参与を設置した会社の計算書類は、そうでない会社の計算書類と比べ、金融機関の信頼を得られるものといえるでしょう。
実際に、日本税理士会連合会の作成した「中小企業会計基準適用に関するチェックリスト」を活用した無担保ローンを取り扱う金融機関は70行を超えています(平成18年1月時点)。このローンは金融機関によって差はあるものの、無担保、無保証に加え、融資審査期間の短縮化、金利の優遇等が行われています。
また、平成17年10月28日付け日本経済新聞によれば、某大手銀行は来年5月をめどに、担保も個人保証も求めない中小企業向け新型融資を大手銀行で初めて導入する方針を決めました。新会社法で導入される会計参与制度を採用すること等が条件とされ、この条件を満たした企業は貸出金利を通常より0.5%以上低くする優遇を受けるか、金利は高めで個人保証なしにするかをい選択できることとされています。