税務上の特例等を受けるための手続きの期限が今年の年末までのもの、暦年単位で実行をした方が節税効果が大きいと思われるもの等、年末までに実行した方が税務上、有利と思われる事項をご説明します。
1.消費税の経過措置を受ける課税事業者の簡易課税選択届出書
平成15年の税制改正により事業免税点が引き下げられたことにより、新たに課税事業者となる事業者が簡易課税制度を選択する場合には、経過措置により平成16年4月1日以後最初に開始する課税期間中に簡易課税事業者選択届出書を提出すれば、当該課税期間から簡易課税制度の適用が認められます(本来、選択届出書の提出は適用を受けようとする課税期間の前日までと規定されています)。
個人事業者の場合、改正により課税事業者となる最初の課税期間は原則として平成17年1月1日から平成17年12月31日であるため、平成17年12月31日までに、平成17年1月1日開始課税期間より簡易課税制度を選択する旨の届出書を提出すれば、簡易課税による申告が可能となります。
2.住宅取得資金贈与の特例
平成17年12月31日までに父母等から住宅所得資金や一定の増改築資金の贈与を受けた場合で、一定の要件を満たす者は、「住宅取得資金等の贈与を受けた場合の計算特例(550万円まで無税で贈与可能)」と「相続時精算課税制度(3,500万円まで特別控除可能)」との何れか有利な方法が選択可能です。
両者とも居住用住宅を取得するための金銭贈与を受ける場合の特例ですが、適用条件が必ずしも同じではないため、両者を比較検討した上でどちらの特例の適用が可能なのか、またどちらの特例を受けるのが有利なのかの判断が重要となります。
平成18年1月1日以降は、相続時精算課税制度(2,500万円まで特別控除可能)の適用のみとなるため、住宅取得資金の贈与を検討されている場合は、平成17年12月31日までに、要件等を確認した上で実行することが必要です。
3.小規模企業共済制度への加入
小規模企業共済制度とは、小規模な個人事業主と会社等の役員のための「退職金制度」と言われています。掛金は毎月1,000円から70,000円の範囲内(500円単位)で自由に選ぶことができ、加入後、増・減(減額する場合には一定の要件が必要です)することも可能です。
税務上のメリットとしては、掛金全額が「小規模企業共済等掛金控除」として課税所得金額から控除される点にあります。1年分の掛金前納制度もあり、年末に1年分前納すれば、最高84万円の所得控除が可能となります。また、共済金等は受け取る際の状況により、退職所得、雑所得、死亡退職金(相続税の対象)など税務上の取扱が異なりますので、ご留意ください。
なお、今後の税制改正により検討が必要と思われるものが、ゴルフ会員権の譲渡です。
ゴルフ会員権の譲渡により発生する譲渡損失について現行法では、他の所得との損益通算が可能です。しかし、昨今の税制改正の動向によると「ゴルフ会員権の譲渡損失の損益通算不可」への改正は必須との声も大きいため、会員権の譲渡を予定されている場合には、年内中の譲渡の実行は税負担の軽減を図る上で重要な検討事項の1つではないでしょうか。
ただし、会員権の種類等によっては他の所得との損益通算ができない場合もあるので、会員権の種類等を確認の上、譲渡を実行されることが肝要です。