住宅取得資金なら 3,500 万円までの贈与が非課税になる「相続時精算課税制度」が実施されています。平成 15 年 3 月の相続税法の改正により新設された制度で、15 年 1 月 1 日以後に行われる贈与から適用をうけることができるようになっています。
非課税枠が 3,500 万円もあることで注目されていますが、相続時精算課税制度、それ自体での非課税枠は原則 2,500 万円で、この制度を利用して住宅取得資金の贈与をする場合に、非課税枠が 1,000 万円 上乗せされて 3,500 万円になる仕組みです。ただ、1,000 万円の上乗せは、贈与が平成 15 年 1 月 1 日から 17 年 12 月 31 日までの 3 年間に行われた場合の特例措置ですので、平成 18 年度の税制改正で延長がされない限り、適用期限がくれば廃止され、非課税枠は 2,500 万円 になります。
一方で、住宅取得資金の贈与については、従来からの 550 万円が非課税となる 5分5乗方式の住宅取得資金の贈与特例も存続しています。この特例も、現在の適用期限は 17 年 12 月 31 日 となっていますが、精算課税制度が創設されたことから、今後、これが再延長になるということにはならないようです。
これから住宅取得資金の贈与をしようという場合には、当分の間、5分5乗方式で 550 万円までが非課税となる特例と、相続時精算課税制度とのどちらかを使えることになるわけですが、生前贈与を行うことのできる金額の多寡によっては、有利・不利が生じるケースもあるようです。住宅取得資金 1,500 万円の贈与について、精算課税制度の方を利用すると、相続時に 1,500 万円がそのまま相続財産に加算されますが、5分5乗方式の場合は、相続の発生が贈与の時から 3年を越えていれば、相続税には影響しないからです。
5分5乗方式のメリットが大きい 1,500 万円くらいまでの住宅取得資金の贈与であれば、まず、これを住宅取得資金とし、その後、住宅の買い換えや増改築に際して贈与を受ける時から精算課税制度を利用する、というのも一つの方法といえるわけです。5分5乗方式は、贈与税の基礎控除 110 万円 を5年分先取りして使う仕組みの特例で、1,500 万円までの贈与についての贈与税を大幅に軽減する効果があり( 1,500 万円では 470 万円 → 95 万円 )、子だけでなく孫も贈与対象とすれば軽減することが可能です。ただし、相続税の基礎控除によって相続税の心配がなければ、精算課税制度の方が有利となります。