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フリーレント期間の定めのある賃貸借取引の取扱い


昨年9月に企業会計基準委員会から新リース会計基準が公表されましたが、フリーレント期間(無償賃貸借期間)の定めのある賃貸借取引(オペレーティング・リース)について、税務においても会計基準と同様の処理が認められることとなりました。

(1)貸手の処理

新リース会計基準では、契約期間にフリーレント期間が含まれるときは、貸手は、契約期間における使用料の総額(ただし、将来の業績等により変動する使用料を除きます。)について契約期間にわたり計上することとされています。

税務では貸手側の取扱いは明確に示されてはいないものの、新リース会計基準に従い会計処理を行った場合には、税務においても会計処理と同様に契約期間における使用料の総額を契約期間で按分し、その契約期間の属する各事業年度の益金の額に算入することになります。

一方、新リース会計基準と異なる会計処理(例:毎月の使用料の受取日において収益計上)を行っている場合には、税務においてもその受取日の属する各事業年度の益金の額に算入することになります。

(2)借手の処理

税務上、借手側の賃貸借取引に係る使用料の取扱いとして、従来は法人税法第53条に基づき、使用料の支払日の属する事業年度(その使用料の債務が確定した事業年度)において損金の額に算入していることが多かったと思われ、会計上、フリーレント期間の定めのある賃貸借取引につき使用料の総額を按分計上している場合では、会計と税務で異なる処理を行っているケースも見受けられました。

令和7年度税制改正により、法人税基本通達12の5-3-2【無償等賃借期間を含む賃貸借取引に係る支払額の損金算入】が新設され、無償等賃借期間(賃借期間のうち賃料の支払がない又は通常に比して少額である期間をいいます。)の定めのある賃貸借取引に係る使用料については、令和7年4月1日以後に開始する事業年度から、下記①及び②を要件として、契約期間における使用料の総額を契約期間で按分し、その契約期間の属する各事業年度の損金の額に算入することが認められます。

損金経理をすること
法人税基本通達では按分した使用料(各事業年度中に支払われるべきこととなる金額)につき損金経理することが要件とされています。フリーレントでは契約期間中に支払がない期間があるため、実際の使用料の支払いについて損金経理したとしても、按分した使用料を損金経理していることにはなりません。
課税上弊害がないこと
例えば下記に掲げる場合など、課税上弊害があるものについては按分計上が認められませんので、契約内容を確認して弊害の有無を判断する必要があります。
  • 当該無償等賃借期間に関する定めがないとした場合に当該賃貸借取引につき支払うこととなる金額と当該契約に基づき支払うこととされている金額との差額が当該契約に基づき支払うこととされている金額のおおむね2割を超える場合
  • 当該賃借期間の開始の日の属する事業年度終了の日において、当該無償等賃借期間内の日の属する各事業年度のいずれかの事業年度で、当該事業年度における賃借期間のおおむね5割を超える期間が賃料の支払がない又は通常に比して少額であるものとなると見込まれる場合(当該契約に係る無償等賃借期間が4月を超える場合に限ります。)