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有価証券の評価損の取扱い


8月の株式市場では日経平均株価の歴史的な値動きが見られ、過去最大の下落後、一転して過去最大の上昇となるなど株価の乱高下が生じました。法人税法上、有価証券の期末評価はその所有する有価証券を売買目的有価証券と売買目的外有価証券に区分し、それぞれ次の取扱いとなります。

(1)
売買目的有価証券
売買目的有価証券とは、短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した有価証券で一定のもの(トレーディング目的で取得しているもの等)をいいますが、売買目的有価証券の期末評価額は時価法によって評価した金額とされています。
時価法とは、期末において有する有価証券を銘柄の異なるごとに区別し、銘柄の同じものについて、その時における価額として一定の方法により計算した金額をもって評価額とする方法をいいます。期末における時価(株価)をもとに算定することになるため、評価損益が発生することになります。
一般的にはトレーディング部門を有する法人など、相当程度の反復的な取得、売却を繰り返して短期的な期間で利益を得ることを目的とする有価証券や、短期売買目的で取得した有価証券である旨を帳簿価額に記載した有価証券が売買目的有価証券に該当しますので、一般の事業会社では売買目的有価証券を保有するケースは少ないのではないかと思われます。
(2)
売買目的外有価証券
上記(1)以外の売買目的外有価証券については、原価法により評価した金額とされます。原価法とは、期末保有有価証券について、期末における帳簿価額(償還期限及び償還金額の定めのある有価証券にあっては、帳簿価額と償還金額との差額の調幣をした後の金額)をもって評価額とする方法をいいますので、原則として評価換えを行うことはありません。
ただし、所有する有価証券(完全支配関係がある子会社で清算中の法人等及び通算法人が有する他の通算法人(通算親法人等を除きます。)の株式等を除きます。)について、次の場合には評価損の損金算入が認められますが、それぞれの事実の発生だけでなく経理処理要件があることにも注意が必要です。
次の事実が生じた場合で、その有価証券の評価換えをして損金経理によりその帳簿額を減額したとき
イ)
取引所売買有価証券、店頭売買有価証券、取扱有価証券及びその他価格公表有価証券等の一定の有価証券(いずれも企業支配株式に該当するものを除きます。)について、その価額が著しく低下したことにより、その価額が帳簿価額を下回ることとなったこと。
ロ)
上記イ)以外の有価証券について、その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したことにより、その価額が帳簿価額を下回ることとなったこと。
ハ)
上記ロ)に準ずる特別の事実
更生計画認可の決定があったことにより、会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定に従って評価換えをしてその帳簿価額を減額したとき
再生計画認可の決定等の事実があったことにより、再生計画認可の決定があった時の価額により有価証券の評定を行っている場合(確定申告書に評価損明細の記載があり、かつ、評価損関係書類の添付がある場合に限ります。)