前の解説へ 次の解説へ

279

消費税インボイス制度の改正


令和5年度税制改正によりインボイス制度の改正が行われましたが、主に免税事業者や小規模事業者向けの改正となっています。

1. 小規模事業者に対する納税額に係る負担軽減措置

免税事業者がインボイス発行事業者となったことにより課税事業者となった場合の納付税額を、課税売上に係る消費税額の2割とする負担軽減措置が導入されました。

  売上に係る消費税 仕入にかかる消費税 納付税額
(1)本則(原則)課税 60万円 20万円(実績) 40万円
(2)簡易課税(仮:第5種事業) 60万円 30万円(50%) 30万円(50%)
(3)改正による負担軽減額 60万円 48万円(80%) 12万円(20%)

インボイス発行事業者となることにより新たに発生する消費税負担増を嫌い、インボイス発行事業者になるかどうかの判断に迷う免税事業者も見受けられるところですが、この負担軽減措置によりインボイス発行事業者となることをあらためて検討する事業者もいらっしゃると思います。

ただし、負担軽減措置は令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において適用されるため、令和8年10月1日以降は本則課税又は簡易課税のいずれかを選択することになります。

2. 一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置

令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者の課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除が認められます。

令和5年10月1日以降の課税仕入れについては、インボイスのあるものとないものに区分して、会計ソフト等にそれぞれの税区分を入力する必要があるため、事務負担の増加が懸念されていますが、本軽減措置の適用対象となるものはインボイス有無の確認をすることなく、帳簿の記載のみで仕入税額控除を適用することができます。

3. 少額な返還インボイスの交付義務免除

売上に係る対価の返還等に係る税込金額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務が免除されます。

4. 登録制度の見直しと手続きの柔軟化

(1)登録制度の見直し

免税事業者がインボイス発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、当該課税期間の初日から起算して15日前の日(改正前:1か月前の日)までに登録申請書を提出する必要があります。

(2)手続きの柔軟化

改正前は、令和5年10月1日から登録を受けようとする事業者は、原則として令和5年3月31日までに登録申請を行う必要があり、令和5年4月以降の登録申請については登録申請書に「3月までの申請が困難な事情」の記載が必要とされていましたが、改正により「困難な事情」の記載が不要とされました。