平成28年度の税制改正により、「特定譲渡制限付株式による役員給与」制度が創設されました。
1. 役員給与の現行制度の取扱
〈ストックオプションによるもの以外の給与〉
法人がその役員に対して支給する給与(※の給与を除く)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととされています。
[1]定期同額給与 |
1ヶ月以下の一定期間ごとに同額で支給するもの |
[2]事前確定届出給与 |
事前の届出に従い、所定の時期に確定額を支給するもの |
[3]利益連動給与 |
利益に連動して支給する給与で、一定の要件等を満たすもの |
- (※)
- (1)退職給与
(2)新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等に規定する新株予約権による給与
(3)(1)及び(2)以外のもので使用人としての職務を有する役員に対して支給するその職務に対する給与
(4)法人が、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることによりその役員に対して支給する給与
〈ストックオプションによる給与〉
所得税 |
ストックオプションの付与時ではなく、権利行使時において、行使時の株式の時価と行使価格との差額が、そのストックオプションを付与された役員等に給与所得等として課税されます。
- ※
- 一定の要件のもと、株式を売却するまで課税が繰り延べられる税制適格ストックオプションを除く。
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法人税 |
役員等に給与所得等が生じた日に法人が役務提供を受けたものとして、同日の属する事業年度において新株予約権を対価とする費用の額が損金の額に算入されます。 |
2. 特定譲渡制限付株式による役員給与制度の概要
平成28年度税制改正により役員給与として支給された一定の譲渡制限付株式による給与を届出が不要となる事前確定届出給与の対象とする制度整備が行われました。また、併せて、譲渡制限付株式の交付に係る経済的利益について、株式交付日ではなく譲渡制限解除日にその日における価額により課税されることの明確化等が行われました。
- (1)
- 譲渡制限付株式とは
一定期間の譲渡制限が付された現物株式を報酬として付与するもので、当該期間中は株式の譲渡が制限されるため、役員のリテンション効果があり、また、株主目線の経営を促す効果を有します。
- (2)
- 適用対象となる特定譲渡制限付株式
適用対象となる特定譲渡制限付株式とは、その法人又はその法人との間に一定の関係がある法人の譲渡制限付株式であってその役務の提供の対価としてその個人に生ずる債権の給付と引換えにその個人に交付されるものその他その個人に給付されることに伴ってその債権が消滅する場合のその譲渡制限付株式をいいます。
- (3)
- 申告にあたっての留意点
本制度の適用がある場合には、その事業年度の確定申告書に、特定譲渡制限付株式の一株当たりの交付の時の価額、交付数、その事業年度において譲渡についての制限が解除された数その他その特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式の状況に関する明細書を添付する必要があります。
- (4)
- 適用時期
平成28年4月1目以後にその交付に係る決議(その決議が行われない場合には、その交付)をする特定譲渡制限付株式及び承継譲渡制限付株式について適用されます。
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