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103 エンジェル税制の有効活用

1.エンジェル税制とは

エンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)とは、ベンチャー企業への投資を促進するためにベンチャー企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度です。ベンチャー企業に対して、個人投資家が投資を行った場合、投資時点と、売却時点のいずれの時点でも税制上の優遇措置を受けることができます。

このエンジェル税制は一部の資産家の方が利用するなど利用シーンが限られていましたが、平成20年度の税制改正で非常に利用勝手が向上し、多くの個人投資家に利用の可能性が広がりました。

2.新しい制度の創設

平成20年度の税制改正で、今までの制度に加え、個人がその年中に特定の中小企業であって、一定の要件を満たす株式会社に出資した場合には1,000万円を限度として寄付金控除の適用が認められることとなりました。

(1) 資本金・従業員基準
中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律に定義する中小企業で業種ごとに資本金および従業員数が一定以下の中小企業。
EX.サービス業の場合:資本金5,000万円以下、従業員100人以下など
(2)

設立年数に応じた基準
下記に掲げる事業形態、設立年数に応じた要件を満たすこと。

設立後1年以上を経過している会社の場合には研究者等を設置していなくても、試験研究費等の割合や売上高成長率等の要件を満たせば適用可能となり、比較的利用し易い制度となりました。


設立経
過年数
技術開発型 ニュービジネス型
1年未満
研究者が2人以上かつ全従業員の10%以上 開発者が2人以上かつ全従業員の10%以上
1年以上
2年未満
試験研究費等(宣伝費、マーケティング費用含む)が売上高の3%超で直前期まで営業キャッシュフローが赤字 開発者が2人以上かつ全従業員の10%以上で直前期までの営業キャッシュフローが赤字
2年以上
3年未満
売上高成長率が25%超で直前期までの営業キャッシュフローが赤字


3.寄付金控除ができる金額

その年の総所得金額から、(投資額−5,000円)を控除可能。
ただし、控除対象となる投資額の上限は、総所得金額の40%と1,000万円のいずれか低い金額まで。

4.計算例

総所得金額700万円、投資額200万円の場合の寄付金控除額

(ア) 1,000万円>700万円×40%=280万円
280万円>200万円
∴全額控除可能
(イ)

200万円−5,000円=1,995,000円
       ↓
個人の所得から控除が可能

なお、適用を受けた金額は株式の取得価額から控除することとなります。